2018年8月23日木曜日

不耕起の家庭菜園・トマトの自然生え



百日草は、真夏の畑の数少ない彩りです。


先週、8月15日の夕方近く、三日ぶりの畑に着くと、
作物が、季節が動いたことを教えてくれました。
それで、一本の支柱では支えきれないほどに成長し、
真紅の宝石のような実をならせ続けたミニトマトと、
自然生えの黄色のアイコ、その2本を整理しました。

真紅のミニトマトは、生育旺盛、
最後まで元気でしたから、
秋作まで、少しの間、土壌のお留守番役として、
根元60センチ、葉を残した状態で畝に残しました。
健康な作物の根は、生きたまま畑に残し、
次作までの間、多少なりとも
土壌の微生物との協働を続けてもらうことが、
土の団粒化を促進させ、地上と地下の
養分循環を滞りなく持続させるための
炭素循環農法家庭菜園の流儀です。







ところで、この赤いミニトマトの完熟した実が

地面のあちらこちらに落ちています。

トマトの原種は、
種が実にびっしりつまっていたそうです。
また、原種から品種改良された食用トマトの原型は、
房成りのミニミニトマトだったそうです。
種の多さで生き残りを勝負していたのですね。
ですから、地面に散らばった真紅の素晴らしいミニトマト、
来年の再会を楽しみに待っています。

改めて、ネットで「自然生え」を調べると、
ルーラル電子図書館に以下のような記述がありました。
家庭菜園の広さでは無理かもしれませんが、
畑と心に余裕のある方は、
遊び半分、お試しください。


***


人が播種するのでなく、落ちた実やタネから
自然の力で生えてくる現象。こぼれダネから生えたものは、
その地の環境に合っているということなのか、
病気や気象変化にとても強いことが観察されている。
このことに学び、(財)自然農法国際研究開発センターは、
誰でもできる自然生え自家採取のやり方を紹介している。
まず、トマトやキュウリなどの果実を樹上で完熟させる。
秋にもいだらそのまま溝切りした土の上に
一坪五~一〇個ほどならべておいて腐らせる。
平均気温一〇度を切る頃になったら土をかぶせて埋める。
翌春、一果から二〇~三〇本の芽が出てくるが、
勢いの弱い株は淘汰されるため、
実を着けられるのは一坪五~六株程度。
そのなかから自分の気に入ったおいしい実のなる株を見つけ、
また果実を完熟させる。
そうやって五~六年も自然生えを繰り返すと、
形質がだんだん揃ってくる。
タネを採ったり乾かしたりする労力がいらないので
気軽にできる。畑は無肥料でやったほうがいい。
固定種からもできるが、
雑種性の強いF1品種を素材にすると、
次世代にいろいろな形質が出てきて
強いタネが残る可能性が大きい。


***


さて、ここ数日、トマトのことを考えていたら、
一人の中国人留学生を思いだしました。

真面目な苦学生でしたが、
夏、アルバイトに出かける前、
綺麗に切ったトマトに砂糖をかけ、冷蔵庫で冷やし、
部屋に帰ってから、食べるのを楽しみにしていました。

そのことを聞いた瞬間、違和感はなく、
ちょっと酸味のある冷えたトマトに甘い砂糖、
疲れた身体においしいのだろうと想像しました。
中国人留学生にとって、トマトは、
果物の感覚でした。

このことと関係するかどうか分かりませんが、
アメリカでは、「トマトは、野菜か果物か」の論争が
裁判ざたになったことがあるそうです。

1893年頃のアメリカでは、
果物には輸入関税がかからず、 菜にはかかりました。
そのため、トマトの輸入業者は、税金逃れのため、
トマトは果物と主張しました。
これに対し、農務省の役人の主張は、野菜でした。
 この論争はエスカレートし、
遂に、最高裁判所の判断を仰ぐことになりました。
   
そして、裁判長の判断は、「トマトは野菜」。
 判決文には、「トマトはキュウリやカボチャと同じように
     野菜畑で育てられている野菜である。     
食事中に出されるが、デザートにはならな い」
とあったそうです。

最近、フルーツトマトと呼ばれる品種が出回り、人気です。
「トマトは、野菜か果物か」、
スーパーでは、専ら、野菜売り場で見かけるトマトですが、
銀座の千疋屋では、どうなのかしら、
ふと考えました。




追記

最近、エッセイストで画家の玉村豊男さんの著書『田園の快楽』を読んでいると、
東京生まれの玉村さんが、小さい時に大好きだったおやつは、
皮をむき、さいの目に切った完熟トマトをコップに入れ、
上からたっぷりの砂糖をかけ、よく混ぜ合わせてから、
冷やして食べるものだった旨の記述がありました。
このおやつは、ことのほか美味しく、一定の年齢から上の人は、
トマトに砂糖をかけて食べた経験がある、
トマトは、野菜と果物の中間のような存在だったとも書かれています。