2020年11月30日月曜日

トマトが赤くなるための条件は?


コロナ禍の2020年11月23日、勤労感謝の日。

横浜の天気は晴れ。一日の最高気温は、20°C、

最低気温は、10°C。この時期としては

信じられないほど穏やかな午後、畑に着くと、

ヒャクニチソウはまだまだ色鮮やか、

薔薇の根元に自生する蕗の青々とした様子が

目を惹きました。








今年、関東甲信越の梅雨明けは、8月1日。

気象庁の発表によると、

平年より11日ほど遅く、昨年より8日遅い 。

梅雨期間中の降水量は、軒並み平年の2倍前後に達し、

東京では、7月中、全く雨が降らなかった日は、

わずか1日だったそうです。


その結果は、日照不足として、

畑でさし芽したトマトの生育の遅れに顕著でした。

秋・冬野菜の植え場所確保のため

それらの苗をあきらめ、取り除こうと思い立った矢先、

なんと10月に入ってから、桃太郎、サンチェリー、共に

 順々と花を咲かせ、立派な果実をきちんとつけ始めました。



11月22日のさし芽苗桃太郎


11月22日のさし芽苗サンチェリー


さし芽ではありませんが、温室なしの芽出しに苦労し、

畑への移植が大幅に遅れた初めてのぷちぷよも

小さな実をたわわにつけています。



特徴である皮の柔らかさから、市場に流通しない、
家庭菜園ならではのぷちぷよ


このようにして、11月という季節外れに大逆転を遂げた

畑のトマト達を眺めながら、

それでも赤く熟すことはないだろうと

半ばあきらめかけていましたら、

驚いたことに、11月も下旬に入って、

その一部が当たり前のように色づき始めました。



11月22日



11月22日




実は熟したとしてもやはり、残りのトマトの感は否めず、

味はもう一つのはず。しかし、このところの気温の高さと

ストレスのない無施肥・無農薬の畑に素直に順応して、

11月も終わりに近い奇跡の路地トマトは、

間違いのない美味しさでした。

私は、今年の気象条件を振り返りながら、

トマトの果実が赤くなるための積算温度の重要性を

 改めて実感しました。



11月18日の収穫



ここで、トマトの果実が色づく条件の一つ、積算温度とは、

一日ごとの平均気温を足していった総計のことです。

すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、

トマトの積算温度について、ネットで調べた内容を

以下に引用します。



例えば、平均気温20°Cの日が10日間続けば
「積算温度は200°C』」となります。トマトは、
開花してからの積算温度が1100°C程度になると着色し
収穫が可能な状態になります。栽培の入門書などでは、
トマトは開花から50日から55日で収穫となる、
とよく書いてありますが、これはトマト栽培期間の平均気温が
20~22°C程度を想定しているからです。簡単に覚えるなら、
「トマトは種まきから約60日(約2か月)で花が咲き、
花が咲いてから50日~55日(約2か月)で収穫になる」と言えます。
(Yahoo知恵袋)



さて、トマトの果実が赤くなるためには、

積算温度以上に大切な前提条件があります。

それは、トマト本体の生育がストレスなく

順調であることです。


トマトが順調に生育するために、慣行農法では、

水遣りや与える肥料の過不足、

時として農薬の必要性が言われます。しかし、元来、

無施肥・無施水・無農薬の炭素循環農法の畑では、

トマトは、土壌の環境が整いさえすれば

このような問題から解放され、自然に順調に育ちます。

クチクラ層が十分に発達し、果実は、光り輝きます。


実際、梅雨明け後の東日本の太平洋側、8月の降水量は、

1946年の統計開始以来の最小雨で、しかも酷暑でしたが、

我が家の畑では、播種、植え付けの際を除き、

トマトはもちろんのこと、他の野菜に対しても

現在に至るまで一滴も水遣りをしていません。


さて、11月24日、連休明けの急な冷え込みで

トマトの明るい緑の葉の一部が黄ばみました。

私は、こうなったら時間との競争とばかり、

全ての果実に陽の光がまんべんなく当たるよう

黄ばんだ葉はもちろんのこと、

その他の元気な葉にも大急ぎで剪定を施しました。






剪定し終えた葉は、

残渣として分解が速く進むようにハサミで細かく刻み、

畝の上に重ね置くと、微生物のエサになります



トマトの根元に残渣



午後からの作業を終えた帰り際、畑を見渡すと、

葡萄棚の手前、セージの花が今を盛りと咲いています。

その青には、コロナで自粛の続くこの時期、

目から元気をもらえる強さがあります。

家庭菜園には、野菜だけでなく、花があると、

色々良いことがあります。









2020年7月24日金曜日

梅雨空の下の炭素循環農法家庭菜園(その2)



関東、東北の太平洋側を中心に

全国で日照不足が続いています。

新聞によると、6月下旬からの日照時間が

平年の4割にとどまる地域もあるとのこと、

実感はしていても、

その極端な数字には、考えさせられてしまいます。



この時期貴重な長ナスの実。



連作で問題のないどころか年々調子のよいナスです。

しかし、さすがに、最近の極端な日照不足には勝てず

まともな形で収穫できるのは、2、3日に一回、

9本の苗木から3~4個といった収穫の少なさです。

果皮まで柔らか、美味といったクオリティは、

例年と変わりませんが、

実がついてから太るのに随分と時間がかかっています。



ナスの根本に落花生の花。



キュウリは、コロナの影響で、時間に余裕ができ、

剪定をていねいに心掛けたせいでしょうか、

実がなりだした当初は、順調に収穫できていました。

しかし、やはり、降り続く雨のせいで、

べと病が速く広がり、夏本番が始まる前に

すでに、3本撤去しています。

かろうじて残った一本は、風通しが良かったようです。

取り除いた病気の葉は、いつもどおり、

畝間に置いたままの状態です。



たった一本残ったキュウリ。



残ったキュウリの数少ない花が無事実になれるのかは、

やはり、今後のお天気次第です。



キュウリの花。



夏の間の数少ない葉物としてポットで育苗し、

やっとのことで畑に移植したツルムラサキは、

幼苗の成長が全く止まってしまっています。

今年初めて試みた、ナスのさし芽も同様です。



つる紫の幼苗。葉の色も弱弱しい。




親株から切り取った脇芽を直接畝にさしたナスのさし芽。



ジャガイモを連作している畝が

秋じゃがの植え付けまで、空きますから、

有効利用を考え、暑さに強い品種と言われる

小松菜の種を播きました。こちらのほうは、この時期、

驚くほどの速さで、2日目には芽が出そろっています。



暑さに強い品種、サカタの「きよすみ」。


ところで、畝の手入れをしながら、ふと見ると、

背丈の伸びたカタバミの茂みの中、

湿った発酵チップの層の表面に

数種のキノコが顔をみせています。






キノコは、カビの仲間の担子菌、

子嚢菌がつくる生殖器官です。

それで、地表に出たキノコを花に例えるとすると、

枝葉、根に相当する菌糸本体の部分は、

目に見えない土壌やチップの内部に綿状、

あるいは、蜘蛛の巣状となって広がっています。

それらは、チップなどの炭素資材に含まれるリグニン、

セルロースなどの難分解物質を分解しながら

体内に取り込み

畑の中で栄養成長を繰り返しています。

菌糸の密度が高くなり、

温度や湿度などの環境条件が整うと、

初めてキノコが形成されるのです。そして、

菌糸から供給される養分で急速に成熟したキノコは

今度は、植物の種子にあたる胞子を飛散させ、

子孫繁栄を図ります。






このようにして、キノコが頻繁に見られるのは、

炭素を軸とした物質循環が活発に行われ、

生命力に満ち溢れる、炭素循環農法の畑の特徴です。













































2020年7月13日月曜日

梅雨空の下 炭素循環農法家庭菜園(その1)



気候変動と一言で言われますが、

2020年の梅雨の雨風の激しさには、

特別なものがあります。日本各地で川の氾濫、

土砂崩れなどが短時間のうちに発生し、

多くの方々が被災されました。

2月からのコロナウイルスの感染拡大と共に、

環境破壊に起因する将来への不安が高まります。


離れて住む家族、友人、知人の無事を想い、

緊張を強いられることの多い毎日ですが、

曇り空の下、菜園のオレガノの蕾が膨らみ、

辺りをモンシロチョウが飛び交う光景は、長閑で、

疲れた心をほっと癒してくれます。

オレガノは、菜園随一の蜜源植物です。



オレガノの蕾



オレガノの蕾の紅紫に触発され、ミソハギはと目をやると、

知らない間に、やはり、蕾をつけ始めています。

たった30坪の家庭菜園ではありますが、

作業に集中していると、

見落としてしまうことも多いのです。


オレガノもミソハギもこの菜園で10年育つ多年草です。

面白がって放っておけば、地下茎を伸ばし、

四方八方、自由自在に繁殖を続け、

野菜のスペースを脅かします。

しかし、花には花の役割があります。



ミソハギの蕾



うっとうしく降り続く雨には、正直、うんざりしますが、

その雨も悪いことばかりではありません。

5月の連休に苗を移植し、無施肥と水やり無しで育った

小ぶりな夏野菜たち。梅雨に入ると、その途端、

周りの慣行に負けず劣らない生育ぶりを見せ始めます

水分の問題と関係するのかもしれませんが、

土壌の生態系もこの時期、

落ち着きをとりもどすのだと思います。


大玉トマト二種、桃太郎、麗夏も

すでに、三段目の収穫が始まりました。



桃太郎




麗夏



園芸作物の中でも最も人気が高いと言われるトマトです。

種苗業界においても品種開発の競争が激しいと聞きます。

その結果、種類が多くなり、

私もミニトマトの選択には、毎年頭を悩ませます。

今年は、園芸店の売り場正面に置かれた

トキタのサンチェリーを育てています。



サンチェリー



このミニトマトは、フルーツトマトのような

甘みを求めるむきには、物足りないかもしれません。

しかし、酸味と甘みのバランスがまろやかで上品。

トマト本来の味が楽しめます。

特に、外見は、クチクラ層が厚いのか、

まるで真珠のように内部から染み出る輝きがあります。

しっかりと見える果皮も噛めば、

想像していたより柔らか、食べ心地の良いトマトです。


クチクラ層は、植物が水中から陸上へと移動した際、

新しい環境に適応するために獲得した組織です。

外界と接する一番外側にあって、

風雨や乾燥、紫外線、病原菌や害虫から

植物を守る役割を果たします。

トマトの裂果についても、クチクラ層の強度が重要で、

クチクラ層の強度はその厚さと相関するそうです。




収穫したサンチェリー



私は、毎年、梅雨の間の作業として、

トマトの脇芽をとり、畝に直接さして株を増やします。

ご近所への夏野菜のお裾分けに、赤いトマトがなければ、

淋しいですし、実が余ったとしても冷凍して、

カレーや̪シチュウ、スープやみそ汁に使えば、良いのです。



さし芽したミニトマト



菜園の畳三畳分を占有するアナベルの花も

そろそろ終わりの気配です。

作業の帰りに根本から数本切り取り、

自宅に持ち帰りました。

水揚げをていねいにしてあげれば、3日はもつでしょう。




アナベルの花