失った薔薇へのオマージュ |
葡萄棚の右手、薔薇の根元をそっと手で払うと、
きれいに団粒化した土が姿を現しました。
前回投入した発酵チップは、
99%分解されてしまっているようです。
良い土です。
しかし、いくら目を凝らしても、この場所に、
有機物を分解し、土壌の団粒化に役立つと
有難がられるミミズの姿は、見当たりません。それは、
実は、ミミズは、何らかの原因で炭素の循環が滞り、
未分解の有機物が残ることになってしまった
土壌を好んで生息するからです。
腐敗に傾きかけた未分解の有機物をエサとして分解し、
土壌を清浄化するミミズは、
非常時に、地下の免疫機能が働いていることの
目視可能な指標生物、その身近な一種と受け止められます。
ですから、ミミズがいるから即、良い土と
簡単に言い切ってしまうわけにもいかないのです。
炭素循環農法で作物を育てる私達は、
微生物の働きが活性化され、土壌の団粒化が進んだ畑で、
めったに目にしなくなったミミズに出会うと、
決まって、「何故?」と
そのミミズが出た原因を探りたくなります。
2017.5.15 ミミズは、条件がそろえば、いつでも出ます。 |
実は、この農法を始めて3、4年たった頃のこと、
玉ねぎの生育がもう一つでした。
それで、人から聞いた方法、
地表から20~30㎝の深さに、
大量の落ち葉を敷き込んだことがあります。
今から考えると、呆れたことに、
土と混ぜるという考えを、全く忘れていたようです。
そして、その結果はというと、
玉ねぎの生育自体、改善されることがなかったどころか、
大量の未分解の落ち葉をエサとする
ミミズやコガネムシの幼虫の大発生をみました。
更には、その後しばらくの間、
それらの微小生物をエサとするモグラの被害に
悩まされました。
結果には、全て原因があるということを
実感し、肝に銘じた貴重な経験です。
失った薔薇へのオマージュ |
話は変わりますが、
最近、K園芸のホームページに載せられている
「薔薇に『元肥を与える理由』」という記事が
目につきました。というのも、
この記事の数か所を、別の語彙に置き換えると、
炭素循環農法の薔薇の育て方について
分かり易い説明が可能になると考えたからです。
以下、実際の記事を引用し、
次に、語彙を置き換えた内容を紹介してみたいと思います。
(実際の記事)
https://keihan-engei.com/baranae/know03/
山に自生している木(野バラも含む)のように落ち葉が徐々に分解され
翌年の肥料分として木に還元されるサイクルが、庭のバラづくりでは
病害虫の発生、伝染の防止のために集めて捨てるので断たれてしまいます。
したがって・年間通して栄養分がなくならないようにする、・元肥を地中に
入れることでバラの生育上大切な微生物を活発化させる、・株付近の土を
掘ることで空気を必要とする根を活発化させる、などの理由から元肥を与え
ます。
(実際の記事の数か所を別の語彙に替えたもの)
山に自生している木(野バラも含む)のように落ち葉が徐々に分解され
翌年の養分として木に還元されるサイクルが、庭のバラづくりでは
病害虫の発生、伝染の防止のために集めて捨てるので断たれてしまいます。
したがって・年間通して栄養分がなくならないようにする、・高炭素資材を
地中に入れることでバラの生育上大切な微生物を活発化させる、・株付近の土を
掘ることで空気を必要とする微生物を活発化させる、などの理由から高炭素資材を
与えます。
いかがでしょう。
分かりやすい説明になったのではないでしょうか。
自然を基準とし、その法則に倣う炭素循環農法では、
秋のもの、すなわち、微生物にとり栄養豊かな高炭素で、
しかも、適当に水分が飛ばされ、腐敗しにくくなった有機物を
資材として土に投入するのが基本です。
それで、私は、今年もこの時期、薔薇の根回りに、
10㎝~20㎝の厚さで発酵チップを播きました。
次に、ガーデニング用のコンパクトな熊手で
撒いたチップを20㎝ほど、空気の入る深さまで
土と混ぜます。ここに住む微生物は、
私達人間の遠い遠い祖先、空気がなければ、
生きていかれないのです。
このようにして、畑に移植してからの
炭素循環農法の薔薇にかける手間といったら、
落ち葉の頃の発酵チップの投入、
2月に入ってからの一般的な茎の更新と枝の剪定、
花が咲いている間の花がら摘みと、花後の軽い剪定、
たったそれだけです。
微生物が活性化し、団粒化した土には、
理由は一つではありませんが、植え替えの時以外、
一年中、水やりもいっさい無しなのです。
失った薔薇へのオマージュ |
炭素循環農法の薔薇は、
薔薇ってこんなに丈夫で簡単に育つのと驚く、
まさに、パラダイムシフトの薔薇です。
これまでの常識を完全に覆し、
アジサイを育てるのとさほど変わらないじゃないのと
拍子抜けしてしまうほどのたやすさで育ちます。
もちろん100%というわけではありませんよ。
ミミズと同様、何らかの加減で
ほんの一部の蕾や茎に、薔薇ゾウムシやアブラムシの姿を
発見することがあります。たくさんの花を咲かせた後、
疲れた薔薇の葉に、黒点病が現れることもあります。
しかし、それも、全くのところ、気にする必要はなく、
放っておいて問題ありません。黒点病で葉が落ちれば、
地面の上にそのままにして置きましょう。
微生物の働きにより、私たちは、化学、有機の別なく、
無肥料・無農薬の、元気な、そして、最高に美しい薔薇を
手間とお金をかけることもなく、
おおらかな気持ちで育て、慈しむことができます。
興味から来る観察は、いつも必要ですけれどね。