2018年12月13日木曜日

無肥料・無農薬・水やり要らず 炭素循環農法の薔薇(その7)




失った薔薇へのオマージュ



葡萄棚の右手、薔薇の根元をそっと手で払うと、

きれいに団粒化した土が姿を現しました。

前回投入した発酵チップは、

99%分解されてしまっているようです。

良い土です。







しかし、いくら目を凝らしても、この場所に、

有機物を分解し、土壌の団粒化に役立つと

有難がられるミミズの姿は、見当たりません。それは、

実は、ミミズは、何らかの原因で炭素の循環が滞り、

未分解の有機物が残ることになってしまった

土壌を好んで生息するからです。


腐敗に傾きかけた未分解の有機物をエサとして分解し、

土壌を清浄化するミミズは、

非常時に、地下の免疫機能が働いていることの

目視可能な指標生物、その身近な一種と受け止められます。

ですから、ミミズがいるから即、良い土と

簡単に言い切ってしまうわけにもいかないのです


炭素循環農法で作物を育てる私達は、

微生物の働きが活性化され、土壌の団粒化が進んだ畑で、

めったに目にしなくなったミミズに出会うと、

決まって、「何故?」と

そのミミズが出た原因を探りたくなります。




2017.5.15 ミミズは、条件がそろえば、いつでも出ます。



実は、この農法を始めて3、4年たった頃のこと、

玉ねぎの生育がもう一つでした。

それで、人から聞いた方法、

地表から20~30㎝の深さに、

大量の落ち葉を敷き込んだことがあります。

今から考えると、呆れたことに、

土と混ぜるという考えを、全く忘れていたようです。

そして、その結果はというと、

玉ねぎの生育自体、改善されることがなかったどころか、

大量の未分解の落ち葉をエサとする

ミミズやコガネムシの幼虫の大発生をみました。

更には、その後しばらくの間、

それらの微小生物をエサとするモグラの被害に

悩まされました。


結果には、全て原因があるということを

実感し、肝に銘じた貴重な経験です。





失った薔薇へのオマージュ





話は変わりますが、

最近、K園芸のホームページに載せられている

「薔薇に『元肥を与える理由』」という記事が

目につきました。というのも、

この記事の数か所を、別の語彙に置き換えると、

炭素循環農法の薔薇の育て方について

分かり易い説明が可能になると考えたからです。



以下、実際の記事を引用し、

次に、語彙を置き換えた内容を紹介してみたいと思います。



(実際の記事)
https://keihan-engei.com/baranae/know03/ 

 山に自生している木(野バラも含む)のように落ち葉が徐々に分解され
       翌年の肥料分として木に還元されるサイクルが、庭のバラづくりでは
       病害虫の発生、伝染の防止のために集めて捨てるので断たれてしまいます。
       したがって年間通して栄養分がなくならないようにする、元肥を地中に
       入れることでバラの生育上大切な微生物を活発化させる、・株付近の土を
       掘ることで空気を必要とするを活発化させる、などの理由から元肥与え
       ます。



(実際の記事の数か所を別の語彙に替えたもの)

 山に自生している木(野バラも含む)のように落ち葉が徐々に分解され
       翌年の養分として木に還元されるサイクルが、庭のバラづくりでは
       病害虫の発生、伝染の防止のために集めて捨てるので断たれてしまいます。
       したがって・年間通して栄養分がなくならないようにする、高炭素資材
       地中に入れることでバラの生育上大切な微生物を活発化させる、・株付近の土を
       掘ることで空気を必要とする微生物を活発化させる、などの理由から高炭素資材
       与えます。




いかがでしょう。

分かりやすい説明になったのではないでしょうか。


自然を基準とし、その法則に倣う炭素循環農法では、

秋のもの、すなわち、微生物にとり栄養豊かな高炭素で、

しかも、適当に水分が飛ばされ、腐敗しにくくなった有機物を

資材として土に投入するのが基本です。

それで、私は、今年もこの時期、薔薇の根回りに、

10㎝~20㎝の厚さで発酵チップを播きました。









次に、ガーデニング用のコンパクトな熊手で

撒いたチップを20㎝ほど、空気の入る深さまで

土と混ぜます。ここに住む微生物は、

私達人間の遠い遠い祖先、空気がなければ、

生きていかれないのです。



このようにして、畑に移植してからの

炭素循環農法の薔薇にかける手間といったら、

落ち葉の頃の発酵チップの投入、

2月に入ってからの一般的な茎の更新と枝の剪定、

花が咲いている間の花がら摘みと、花後の軽い剪定、

たったそれだけです。

微生物が活性化し、団粒化した土には、

理由は一つではありませんが、植え替えの時以外、

一年中、水やりもいっさい無しなのです。

 


失った薔薇へのオマージュ




炭素循環農法の薔薇は、

薔薇ってこんなに丈夫で簡単に育つのと驚く、

まさに、パラダイムシフトの薔薇です。

これまでの常識を完全に覆し、

アジサイを育てるのとさほど変わらないじゃないのと

拍子抜けしてしまうほどのたやすさで育ちます。


もちろん100%というわけではありませんよ。

ミミズと同様、何らかの加減で

ほんの一部の蕾や茎に、薔薇ゾウムシやアブラムシの姿を

発見することがあります。たくさんの花を咲かせた後、

疲れた薔薇の葉に、黒点病が現れることもあります。

しかし、それも、全くのところ、気にする必要はなく、

放っておいて問題ありません。黒点病で葉が落ちれば、

地面の上にそのままにして置きましょう。


微生物の働きにより、私たちは、化学、有機の別なく、

無肥料・無農薬の、元気な、そして、最高に美しい薔薇を

手間とお金をかけることもなく、

おおらかな気持ちで育て、慈しむことができます。

興味から来る観察は、いつも必要ですけれどね。




12月初旬、よく見れば、キノコがまだ出没する畑